支払利息が損金にならない?
国際税務
作成日 : 2020年10月19日
支払利息が損金にならない?
はじめに
借入によって資金調達をすると利息を支払います。この利息は金融機関などの第三者からの借入に対するものがほとんどですので、支払った法人ではその利息を損金に算入することができます。しかし、この資金調達が国外の関連会社からの借入の場合には注意が必要です。
利息の支払い側と受け取り側の国が違うとその税率差を利用して租税回避ができてしまうため、そういった取引を規制するために、それらを制限する税制があるからです。
日本では、国外関連者へ支払う利息を規制する税制として、過少資本税制と過大支払利子税制の2種類があります。なお、借入の利率そのものの妥当性に関しては、別の記事でご紹介した移転価格税制によって規制されることになりますが、今回ご紹介する2つの税制はそれとはまた別のアプローチによる規制です。
過少資本税制
過少資本税制は、資本と借入のバランスに着目し利息の損金算入を制限する規定です。国外関連者からの資金調達であれば、資本として調達するのか、借入として調達するのか、ある程度自由に決めることができてしまうため、借入の比率を大きくして、支払利息を大きくすることで、税金を減らすということができてしまいます。
そこで、過少資本税制では、資金調達元の国外関連者からの資本と借入の金額を比較し、借入の額が資本の額の3倍を超える場合に、その超えた部分の借入に対する利息を損金に算入しないと定めています。
なお、この3倍という数字については同業他社の比率を用いて合理的に説明することができれば、別の数字を基準として適用判定をすることができます。
過大支払利子税制
過大支払利子税制は、上記の過少資本税制とは異なり、国外関連者に対する支払利息の額と、その利息を支払った事業年度の所得に着目して、利息の損金算入を制限する規定です。過少資本税制がBSからのアプローチだったのに対して、過大支払利子税制はPLからのアプローチといえます。
過大支払利子税制では、国外関連者への支払利息の額のうち、その利息を支払った事業年度の所得を基準とした金額(調整所得金額)の20%を超える部分は損金に算入しないと定めています。
なお、この20%という割合は、元々50%だったものが、2019年度の税制改正で大幅に引き下げられています。これはOECDによる世界的な租税回避防止に関する報告(BEPSプロジェクト)で、過大支払利子税制の基準固定比率は10%~30%が適切であるとされたことに起因しています。
適用関係
過少資本税制、過大支払利子税制、そして冒頭で触れた移転価格税制の3つの税制が競合した場合、日本ではまず移転価格税制が適用されます。また、過大支払利子税制と過少資本税制の両方が適用されることになる場合、それぞれ計算された損金不算入額のうち、いずれか多い金額が損金に算入されません。
おわりに
今回ご紹介した制度は日本の制度についてですが、過少資本税制も過大支払利子税制も世界中で採用されている税制です。海外進出を予定している国にも同じような税制が導入されているかどうか、事前にしっかりと確認し、対策を講じておくことが必要です。
世界的な流れとして、国外関連者に対する利息の支払いは制限される傾向にあります。現状では導入されていない国でも、新しく導入される可能性は十分に考えられますので、進出後も、現地の専門家を通して対象国の税制を常にモニタリングしておきましょう。
この記事の執筆者
MABC 事務局
株式会社AmandA
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